ちょっとしたお話

けんたが我が家へやって来たのは2000年10月23日。
この日が来るのをずっとずっと待っていた。予定されていたのは11月の中旬だったから
突然の訪問の知らせに食事が喉を通らなくなってしまった。
普通にしているのに顔が笑ってしまう。たった1匹の仔犬の訪問で家族には笑みが戻ったように思う。
準備といえば何ヶ月も前から整っていた。整いすぎていたと言ってもいいと思う。
トイレ、サークル、ベット、おもちゃ、首輪、リード何もかも買いまくった。
先走りすぎて使えないもの、彼の好みに合わないおもちゃ、おやつばかり買っていた。
今なら何でもわかるのにね。
でも何もせずにはいられなかった。複雑な気持ちもあったがこれから迎え入れる
新しい家族をみんな心から待っていたから。

けんたが来る前、私たちにはMIX犬のじょんという家族がいた。
小学生の時だだをこねまくって2年間朝から晩まで「犬が欲しい!」を騒ぎ立て
父の会社にまで電話を掛けた事も何度もある。
もちろん怒鳴られちゃった…
そんな父もあまりのくどさとやかましさに許しを得てくれた。
それはある日突然のことで
いつも通り学校から帰ってきたら部屋で小さな犬がコロコロ転がって遊んでいる光景が目に入ってきた。
嬉しくて嬉しくてすぐに大好きになった。
小さいのに足だけはすごく太くて大きくなるだろうと家族で話し合って
名前はじょんに決めた。
父は小さい頃から家には絶えず犬がいる生活だったらしい。
そんな父が「2度と犬とは暮らさない!」ここまで決意するなんて
どれだけ辛い思いをして愛犬との別れを体験してきたのか今の私なら少しはわかってあげられた気がする。
私はじょんが来てからは朝から晩までじょん、じょん、じょん…すぐに大好きになった。
楽しい時、辛い時、いつも側にいてくれた。
大きくてフワフワで頼りになるお兄ちゃんみたいな存在。
当時のうちの近所では犬を飼っている家などほとんどなく、苦情やイヤミは何度となく耳にした。
何度も保健所へ連れて行けと言われた事もある。
その度にじょんと家出するってだだこねまくって家族を困らせた。

じょんと暮らして13年目のある日の事…
じょんは2000年6月24日お星様になってしまいました。
そんな予感はまったくさせず突然の出来事。
6月23日夜中突然呼吸がおかしくなった。
息が荒くなんとなく咳き込んでいるようにも思えた。
お水を持ってきても飲まず、夜の3時過ぎ構わず散歩に連れ出すが喜ぼうとも歩こうともしなかった。
なんだかおかしい。
心配で眠れずずっと側についていたが一向に良くならない。おかしい…
朝になっても変わる事はなく、その時一瞬心によぎった「死」
こんな事を思う日が来るなんて・・・考えた事もなかった。
急いで医者に連れて行こうとするがすでに歩く事を嫌がった。
無理させて歩き出したけどすぐに向きを変えておうちに帰ろって訴えてくる。
大型犬と言えるじょんを抱っこして医者へ行った。
この時はもう吠える事も出来なかった。
診察を終えて先生から「これからが大変ですよ」との言葉を聞かされた。
先は長くて3ヶ月だった。治療法は無しとの事。
次に出てきた言葉は「安楽死」。
涙が止まらなかった。なんで?なんでそんな突然に...?
昨日までいつもと変わらず元気だったのに。何も変わりはなかったのに。
じょんがいなくなるなんて嫌だよ。
治療して治る事はないけど、少しなら寿命を延ばせるかもしれないと言われた。
「どうしますか?」の言葉にすぐに治療を選んだ
頭の中は真っ白だった。

お散歩が大好きだったじょんがもう歩く事も出来なくて
大好きなジャーキーも食べれなくて苦しんでいるのに
辛い治療して病院で数ヶ月生きる事は意味があるのかな…
まだよくわからない。なんにも考えられなかった。
これからの事は私一人では決めちゃいけない気がした….
先生は今日は少しでもじょんを寝かせてあげた方が良い。と言った。
じょんは昨日全く寝てない。
じょんは外飼いが長かった為、些細な音や人の気配で起きてしまう事が多かった。
注射も打ち、少し楽になるはずなので一人でゆっくりさせてあげる事になった。
行くあてもないまま30分程車を走らせていた。その間涙が止まらなかった。

やっぱり帰ろうと思ったら仕事から帰ってきた母から電話が入った。
「帰っておいで」
家に着くとじょんはもう永遠の散歩に出かけてた後だった。
なんの治療もしないままに。
玄関の方に顔を向け母が家に入った途端目を閉じたと教えてもらった。
もう歩けなかったはずなのに家中すべての部屋によだれの後を残して。
探したのかな?それとも最後にもう一度確認しておきたかったのかな?
苦しいのに…歩けないのに階段まで上がって何でそんなムリしたのかな?
それはわからない。けど最後に寂しい思いをさせてしまった後悔だけが心に重く残る。
なんで側についていてあげなかったんだろう。
なんで一人ぼっちにしてしまったんだろう。
なんで抱きしめていなかったんだろう。
私の大切なじょんはもういない。
ちっともいい飼い主ではなかったけどじょんは私に出会えてよかったと思ってくれるかな?
そう思ってくれてたらいいな。
じょんくん13年間ありがとう。
私はじょんと出会えて本当によかった。幸せいっぱいもらったよ。ありがとう、ごめんね。
じょん、大好きだよ。

2000.6.24
じょん長楽寺に眠る。


じょんのいない生活は辛かった。いるべき場所にいない。
聞こえるわけない爪の音、シッポを振る音、聞こえるような気がして耳を澄ましてる。
聞こえるわけないのにね…わかっているのに何度も落ち込んでしまう。
涙と後悔だけ
このままじゃいけないね..でも動物はもう…別れが辛いから…
そんな時ビーグルの赤ちゃん…と声を掛けてくれた人がいた。
それがけんた。戸惑いはいっぱいあった。
けど今新しい家族となって我が家にいる。大切な大切な家族。
もちろんじょんを忘れたわけでも、じょんのかわりでもない。
今はじょんの思い出とこれから作るけんたとの楽しい日々を思い心から笑うことが出来る。